映画『せかいのおきく』ロッテルダム国際映画祭ワールドプレミア上映レポート

現在オランダで開催中の第52回ロッテルダム国際映画祭≪ビッグスクリーンコンペティション部門≫に選出された映画『せかいのおきく』が、現地時間2月1日(水)に行われたワールドプレミアで世界初上映されました。日本から阪本順治監督、中次役の寛一郎、YOIHI PROJECT代表で本作の企画・プロデューサー・美術監督の原田満生が参加しました。

映画祭ディレクターのヴァーニャ・カルジェティッチ氏に「22年ぶりに阪本順治監督をご招待できることを大変光栄に思います。全く従来の型にはまらない素晴らしい作品です。」と紹介され、約300人の観客が映画を鑑賞しました。
翌2月2日(木)の上映もチケットがソールドアウト。上映中、何度もクスクスという笑いが起き、観客からは、「美しく、可愛らしい映画」という感想が多く聞かれました。モノクロの映像美やおきくの恋がオランダの観客の心も掴んだようです。
また、上映後のQ&Aでは「なぜ糞尿をテーマにしようと思ったのか」「映画の中の糞尿はなにでできているのか」といった本作のモチーフについて質問が続き、阪本順治監督と寛一郎がユーモアを交えながら回答し、会場は和やかな笑いに包まれました。
江戸時代の〈循環型社会〉を描いた本作が、サスティナビリティの先進国であるオランダの観客にも大きな感銘を与えたようで、世界でも更なる注目を受けることが期待されます。

以下、コメントとQ&A抜粋記載

ロッテルダム国際映画祭ディレクター:ヴァーニャ・カルジェティッチ氏(写真中央)

22年ぶりに阪本順治監督をご招待できることを大変光栄に思います。この映画には、少しおせっかいな人々の雰囲気や和気藹々とした中に、叙情豊かなシーンが盛り込まれており、それ以上に驚きがたくさん詰まった作品になっています。そして、全く従来の型にはまらない素晴らしい作品となっています。

公式上映後のコメント

阪本順治監督

緊張もしましたが、温かく迎えてもらえたと思いホッとしています。最初から海外の方が観るという前提で作っているわけではなかったので、思ってもみない反応があって新鮮でした。

寛一郎

日本の江戸という文化、美徳をどうオランダの人たちが受け取って解釈してくれたのか気になりますが、今の僕らと通じる何かは確実に伝わっていると思うので、まずは「観てくれた」ということが嬉しかったです。

原田満生

『せかいのおきく』が、世界に旅立ちました。本当に、素晴らしいことだと思います。この作品を観た海外の方々が、どう想い、感じるのか、それが不安でしたし、興味がありました。結果は、受け入れられたと思います。海外の映画人からも色んな意見も聞けましたし、嬉しかったです。

上映後のQ&A(一部抜粋)

Q. こんなに匂いを感じる映画は初めて観ました(笑)。映画の中の糞尿はどんな素材でできてるのですか?

阪本監督:この映画は三年かかっていて、最初は段ボールを千切って作っていたが、改良を重ね、残飯などを使って顔にかかっても大丈夫な素材になっています。
寛一郎:実際、少し臭かったです。(笑いが起きる)

Q. この映画を作る上で、どのようなリサーチをしてリアリティを加えていったのでしょうか?

阪本監督:日本は鎖国時代、この国(オランダ)とだけ付き合いがありました。当時日本に住んでいたオランダの方々が目にしたものがちゃんと記録に残っていて、日本の循環型社会について書かれている本があり、それを参考にこの映画を作りました。

Q. 中次というキャラクターはどうやって作っていきましたか?

寛一郎:フィジカル的な面では昔の江戸のことが多いですが、精神的な面では、今日に近い人をイメージしました。それは、時代ではなく「今日に続く何か」という現代に寄せて演じていました。

Q. 糞尿が多くを占めているのにとても美しく、そして可愛らしい映画でした。なぜこれを描こうと思ったのでしょうか?

阪本監督:原田プロデューサーから、江戸の食のサイクルをやろうと。循環を見せるには糞尿を覆い隠しては撮れないと思いました。多すぎましたか?(笑いが起きる)
寛一郎:たくさんウンチが出てくると、スタッフのテンションが上がっていました。劇中の血や雨、雪は映画を助けてくれるアイテムの一つであると思いますが、そこにウンチも加わったと思います。(笑いが起きる)

▼第52回ロッテルダム国際映画祭
『せかいのおきく』 英語題『Okiku and the World』
https://iffr.com/en/iffr/2023/films/okiku-and-the-world
▼≪ビッグスクリーンコンペティション部門≫作品一覧
https://iffr.com/en/iffr/2023/big-screen-competition

▼ロッテルダム国際映画祭期間中の情報はYOIHI公式Twitterをご覧ください!
https://twitter.com/yoihi_project

『せかいのおきく』2023年4月28日(金)GW全国公開
脚本・監督:阪本順治 出演:黒木華 寛一郎 池松壮亮
配給:東京テアトル / U-NEXT / リトルモア
(c)2023 FANTASIA

映画公式サイトURL:sekainookiku.jp
公式 Twitter アカウント:@okiku_movie

この記事をSNSでシェア

その他の記事

Home / お知らせ / 映画『せかいのおきく』ロッテルダム国際映画祭ワールドプレミア上映レポート