『せかいのおきく』観客熱狂の韓国上映レポート 阪本順治監督×ポン・ジュノ監督、ユ・ジテ特別対談!

チケット販売と同時に超高速完売!韓国の観客の熱狂的な反応!

映画『せかいのおきく』が2月21日から韓国で公開スタートしたことを記念して、阪本順治監督とプロデューサー/美術監督の原田満生が渡韓し、24日(土)から26日(月)の3日間、観客と熱い交流を深めました。

2023年度の「第97回キネマ旬報ベスト・テン」第1位&脚本賞2冠、「第78回毎日映画コンクール」大賞&脚本賞&録音賞3冠を受賞した『せかいのおきく』は、世界が待ち望んでいた今年の話題作として韓国でもメディアや評論家から最高の評価を受け注目を集めています。阪本監督と古くから交流のあるポン・ジュノ監督(『パラサイト 半地下の家族』)、阪本監督の『人類資金』に出演した経験がある俳優のユ・ジテさん(『オールド・ボーイ』)との対談付きの上映チケットは販売と同時に超高速で完売!韓国の観客の熱狂的な反応の中、素晴らしい上映会となりました。

「おきくは今まで見たことのないキャラクター」

「中次の心さえ配慮する監督の繊細な心が際立つ」

ポン・ジュノ監督と深く作品を考察した特別なひととき!

24日(土)午後2時、韓国の観客を前に阪本監督と原田プロデューサーは、「若い方々がたくさんいて驚きました。嬉しく思います」と喜びの挨拶をした。上映後のイベントでは、阪本監督が「海外の各国で上映された際、この反応に応えられることが本当に素晴らしいことでした。この映画が‘サスペンス’という評価を受けたことがありますが、皆さんはどのように映画をご覧になりましたか?」と観客に質問し、19世紀の江戸時代の下肥人の若者たちの生活を描いた異色のモノクロ映画を初めて見た韓国の観客の反応に興味津々。その後、江戸時代を舞台にした理由、モノクロ映画で撮ることになった経緯、キャスティングの裏側、映画のテーマである‘サーキュラーエコノミー’についてなど、より深い話が続き、人々が最も興味を抱く‘うんこ’の話題に「実は“食べられないうんこ”と“食べられるうんこ”の2種類を作りました。(笑)長屋の地面や船に積むうんこは、段ボールを削って、水と油を注いで着色し、薬用入浴剤などをいれて泡をたて発酵してる感じを表現した、食べられないうんこです。俳優に飛び散る可能性があるシーンでは、お麩などの食用品を使って、食べられるうんこを作りました。」と原田プロデューサーが制作秘話を明らかにし、会場は笑いに包まれました。進行役の作家のキム・セユン氏は、「世界の主役になれない存在が主役になるのが映画なら、私は当然、いつかは‘うんこ’が主役になるべき運命だったのではないかと思います。だからこそ、‘うんこ’の話から始まり、眩しい‘青春’の話まで進むこの映画を見ながら、特別に愛おしく思うようになりました」と“うんこ”への愛情たっぷりの感想を述べました。

2日目の25日(日)の午後12時30分、アートハウスモモで行われた上映では、主人公が口癖のように言う「青春だなぁ」という台詞の意図は?という質問に対し、「武士の時代が終わり、より新しい世界に向かうしかない状況で、名前もなく生きてきた人々がより明るい未来を予測し、自由を求める意味で‘青春’という言葉を使った」と明らかにし、観客は深く頷きました。

同日午後2時に行われたCGVヨンサンアイパークモールでのポン・ジュノ監督との対談では、「ポンテール」(ポン・ジュノ+ディテール)という愛称に相応しく、阪本順治監督の繊細な演出が映画の随所に隠されていることに触れました。たとえば、「突如挿入されるカラーシーンが映画のリズムを生み出す演出意図は何か?」、「3年に及ぶ長い時間をかけて新しい章を作り出す際にどのようなリズムで続けるかをどう考えたのか?」、「映画全体の微妙なリズムを形成する美しいインサートショットをどこにどのように配置し、どのようなリズムで調整したか?」など、制作的な秘密について質問を投げかけました。

また、黒木華が演じるおきくについて、「特有の生命力があり、女性としての恥じらいや控えめな面もあり、没落した侍の娘として傷を持つ内向的な面もありつつ、長屋の住民の前ではきっぱりと話す強い面もある。これまで見たことのないキャラクターだ」と賞賛しました。

そして、多くの人が最高のシーンとして挙げる雪景色のシーンについては、「中次が雪が降ると周囲が静かになるのが好きだと言ったが、そのシーンに台詞がない。主人公に対する監督の繊細な配慮だったのでしょうか?」と、阪本順治監督のキャラクターの心さえも考慮した繊細な視点について丁寧な質問を投げかけました。阪本監督は「声を出さずに心を表現するシーンです。雪が降ると周囲が静かになるという中次の心を考えると、そのシーンでは音楽を入れたくても入れてはいけないと思いました。だから音楽を入れませんでした」と回答し、観客により豊かで深い映画的解説を伝えながら熱い現場の雰囲気に熱を加えました。

26日(月)、江南のアート系映画館、アートナインのイベントに駆けつけてくれたのは『オールド・ボーイ』などで 知られる韓国を代表する演技派俳優、ユ・ジテさん!ユ・ジテさんは日本に半年間住んでいた経験があるため、日本語もかなり理解されていて、阪本監督と旧知の仲のふたりは息もぴったり。トークは大盛り上がりで 、質疑応答も質問が途切れず、1時間延⻑して終了しました。

韓国キャンペーンを振り返って。− 原田満生

今回のキャンペーンで感じたのは、どこの劇場でも、若い観客が本当に多かったことです。珍しい光景でした。韓国の皆さんは、映画の創り手に対するリスペクトが凄いという話も方々で耳にしました。熱心に質問もされるし、質問のレベルも高い。また、終わったらサイン会になり、皆さんちゃんと並んで待っている。とても映画愛を感じた出逢いの数々でした。また、配給会社の方々も、何パターンもオリジナルポスターを作り、「おきくのお守り」などのオリジナルグッズ、「おきくのおにぎりセット」も販売されてました。『せかいのおきく』への愛情を感じましたし、色んな努力が本当に嬉しく、感謝でいっぱいの旅となりました。

韓国のメディア、評論家、映画監督のみなさんが『せかいのおきく』にコメントを寄せてくださったのでぜひご覧ください。

レビュー

江戸時代の最底辺で生きる庶民の青年たちを非常に純朴に描いた感動的な映画。
– キム・ドンホ(前釜山国際映画祭委員長)

最も狭くて汚い場所から生まれる詩的な美しさ。その晴れやかな魂たちの世界。
– ポン・ジュノ監督

江戸時代の風俗が、モノクロの版画「浮世絵」のように、次々と展開されて心に染みる。
– チョン・ソンイル(映画評論家)

今年見た最高のメロドラマ映画。この映画を見ていない人がいなくなるようにしたい。
– イ・ファジョン(映画ジャーナリスト)

青春、愛、友情、家族、使命感など、多様な人生のテーマを寛大に受け入れる。ミニマルでシンプルで、純粋で爽やかな映画。
– キム・ヒョンミン(映画ジャーナリスト)

画面はモノクロだが、世界の全ての色を含んでいる物語。
– キム・セユン(作家)

与えられた日々を真面目に装っていこうとする意志を失わない青春たちがいる映画の風景は、素朴に美しかった。青春という言葉はどれほど素晴らしい言葉か。
– イ・ウンソン(映画ジャーナリスト)

心を打つ美しさに夢中になった。美学の祭典そのもの。
– 亚洲日报

全てを包み込み、さらには糞を運ぶ籠を持って生きる人まで抱え込む、広い余裕のある『世界』がとても美しかった。こうした美しい映画を作ることができることに驚いた。
– キム・ハンミン監督(『神弓 KAMIYUMI』)

おきくとその周囲の世界、その世界を生き抜く方法と希望、絶対に見逃せない愛の力まで、繊細で楽しいに満ちた特別な作品。日本のモノクロ時代劇でありながら、今の私たちに響く物語。再び生きる力を得させてくれる。
– チョン・ユンチョル監督(『マラソン』)

純粋で澄んだ感動がある映画。忙しくて混乱した足取りと心を一時停止させ、自分自身の世界を振り返る時間を持つことができる素晴らしい映画。
– シン・ジヘ(アナウンサー)

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